社会課題解決への取り組み

 

当社はビールの製造・販売事業を通じて、地域活性化や環境問題といった社会課題に挑んでいます。山梨県小菅村を拠点に、規格外農産物の活用や観光事業者との連携などを展開し、地域から世界に向けた持続可能な価値創出を目指しています。

地域社会との共生

当社のミッション・ビジョンを実現するための価値基準として「地域との共生」を掲げています。

地域社会は事業を支える基盤です。それは単なる市場でなく、共に価値を創出するパートナーであると考えています。

地域社会との共創は、ビールの多様性と豊かさを通じて顧客の価値を創出するという、我々の存在意義そのものです。都会や海外の消費者は、地域で生まれたストーリーに共感し、商品やサービスに愛着を持ちます。

だからこそ、地域社会への貢献を通じた長期的価値の創造こそが、私たちの進むべき道だと考えます。地域社会との強固な関係構築こそ、長い目で見ると会社を成長させ顧客の価値を創出する力となります。

Brewed with YAMANASHI

「Brewed with YAMANASHI」は、山梨の地域資源を活用したビール造りを通じて、地域の活性化を目指す取り組みです。このプロジェクトは、2020年7月に「山梨応援プロジェクト」として開始され、2024年に「Brewed with YAMANASHI」へと名称を変更しました。

これまでに、桃、梅、ブドウなど、山梨県内の農産物を使用したビールを醸造し、山梨の魅力を全国に発信しています。 例えば、「Peach Haze」は、山梨市の桃農家「ピーチ専科ヤマシタ」の桃を使用したヘイジースタイルのフルーツペールエールで、毎年醸造・販売される人気商品です。
また、「Grapevine」は、シャトー・メルシャン 勝沼ワイナリーの摘房ブドウを活用したビールのシリーズで、ブドウ本来の風味を最大限に引き出しています。

2025年には山梨県大月市産の大麦と山梨県北杜市産ホップを使用し、100%山梨県産のものを使用して醸造した「Far Yeast 月の出エール/月の出ラガー」をリリースしました。本商品は大月市の新たな特産品として「BigMoonBeer」のブランド名でも販売されています。

これらの取り組みを通じて、当社は地域社会との共生を推進し、山梨県の魅力を日本だけでなく海外にも発信しています。

地域の観光事業者と連携

当社は地域の観光事業者と連携し、クラフトビールを通じた地域活性化に取り組んでいます。当社は小菅村観光協会および大月市観光協会に加盟し、道の駅こすげや宿泊施設、キャンプ場などでビールを提供しています。これにより、観光客に地元の味を楽しんでいただく機会を創出し、地域のファンづくりを進めています。また、地元食材とのペアリングや、お土産商品の共同開発も進め、観光と飲食を融合させた体験を提供しています。

さらに、多摩源流まつりやトレイルラン、大地の恵みまつりといった地域イベントでは、出店や協賛などを通じて地域との接点を強めています。これらのイベントは地元住民や村出身者、観光客が一堂に会する貴重な場であり、地域の魅力発信と再訪促進に貢献しています。

加えて、観光協会と協力し、観光施設周辺の清掃活動(草刈り等)や環境整備などにも取り組んでいます。こうした活動は地域の持続可能性を高め、観光地としての魅力維持にも寄与しています。今後も地域と一体となった価値創出を目指していきます。

地域での雇用促進

小菅村の本社では役員、正社員、アルバイト、業務委託など多様な働き方で合計30名(2024年9月1日時点)が勤務しております。小菅村在住の従業員は10名、従業員の家族を含めると20名おり、地域住民の働く場所となると共に、当社で働くことを目的に山梨県に移住してきた人もおり、移住促進にも貢献しています。

 

地域振興への協力

当社は小菅村の移住者のためのイベントも支援しています。2024年11月には小菅村の移住セミナーにて、小菅村での働き方と暮らし方をお話しさせていただき、2025年2月には移住者向けの職業体験イベントの受け入れを行いました。

また小菅村の小中学校向けに講演会や工場見学の受け入れ、山梨県立都留高校で働き方や地域との関わり方に関する講演、上野原の事業者向けに商品開発の講演などを行なっています。

小菅村の事業者であるStudio畑の前、NPO法人多摩源流こすげ、及び中央大学商学部の学生と、山梨県小菅村のヒノキを活用した木製ビールグラス「快(かい)」と「鱗(うろこ)」を共同開発し、地域の事業者と共に小菅村の資源を活用した取り組みを進めています。

山梨県との取り組み

当社代表は山梨県の県政運営の基本指針である「山梨県総合計画(2023年策定版)」の策定に協力しました。山梨県と共にSDGsを推進していくことを宣言し「やまなしSDGs推進企業」の第一期に登録するとともに、山梨県主催イベント「YAMANASHI SDGs FORUM 2024」にも登壇しました。

また当社は山梨県と共に誰もが「多様性」を認め合うことができる「共生社会」をともに目指し「やまなし共生社会推進プレイヤーズ」に登録すると共に、山梨県の人口減少対策に賛同し「やまなし人口減少危機突破共同宣言マニフェスト」を公開しました。

山梨県小菅村に複合施設をオープン

当社は地域に密着した活動に注力し、それを大都市圏や世界に発信することで、新しい市場を創造することを目指し、山梨県小菅村に複合施設をオープンします。この複合施設は農業体験、製麦体験、ビールづくり体験、レストランと体験を中心にビールの原料づくりからビールをビールを飲むことまで、一貫して楽しむことができます。

環境に対する取り組み

ビールの製造工程は、その魅力的な風味や品質を確保するために多くのエネルギーを必要とします。たとえば、麦汁を煮沸する際には大量の熱エネルギーが必要であり、仕込み後の急冷や発酵・熟成のために、温度を精密に制御する冷却・保温エネルギーも不可欠です。また、発酵中に炭酸ガスを加える炭酸化工程や、清掃・洗浄のための温水利用など、多岐にわたるプロセスがエネルギーを消費します。

こうしたエネルギー集約的なビール製造に対し、当社では2017年に山梨県小菅村に源流醸造所を開設して以来、一貫して環境負荷の低減に取り組んできました。その根底には「地域資源と調和しながら持続可能なクラフトビール文化を創る」という理念があります。

容器内二次発酵とナチュラルカーボネーションによるCO₂使用量の削減

当社では、自然な炭酸(ナチュラルカーボネーション)を生み出す「容器内二次発酵」の技術を積極的に採用しています。これは、ビールを瓶や缶に詰めた後に微量の酵母と糖を加え、容器内で再発酵を行う手法です。この工程によって自然に炭酸ガスが生成されるため、工場での人工的な炭酸ガスの注入量が削減でき、二酸化炭素の使用量が大幅に削減されます。これは地球温暖化防止に貢献するだけでなく、味わいにも奥行きを与える手法です。

蒸気の再利用による熱の有効利用と臭気防止

ビールの仕込み中に発生する蒸気は、本来であれば排出されるだけのものです。しかし当社では、この蒸気を凝縮・液化し、お湯として再利用しています。これにより、仕込み工程での熱エネルギーを無駄なく活用できるほか、蒸気に含まれるホップや麦芽の香りが工場の外に拡散するのを防ぎ、周辺環境への配慮も行っています。特に小菅村のような自然環境豊かな地域では、景観や香りの保持にも細やかな配慮が求められます。

この取り組みは、大手ビールメーカーでは一般的ですが、クラフトビール業界ではまだ珍しく先進的な事例です。

食品ロス削減・アップサイクルへの取り組み

製造過程で生じるロスや、賞味期限の関係などで販売が難しくなったビールについては、廃棄するのではなく、新たな価値を持つ製品として再生する「アップサイクル」の取り組みを進めています。具体的には、これらのビールを蒸留し、スピリッツやリキュールとして生まれ変わらせることで、資源の無駄を極力減らしつつ、新たな市場価値を創出しています。

また、地域資源を活かしたアップサイクルにも力を入れており、山梨県内の農産物生産者と連携し、出荷規格から外れた農産物を副原料として活用する「Brewed with YAMANASHI」プロジェクトを展開しています。これまでに、桃や葡萄、トマト、米、小菅村産の梅など、多様な素材を用いた12種類の個性豊かなビールを開発してきました。これらのビールは、味わいのユニークさだけでなく、食品ロス削減や地域農業の支援といった社会的意義も評価され、多くの消費者から支持を集めています。

麦芽カスと副原料の100%資源化で廃棄ゼロを実現

ビール醸造後に残る「麦芽カス」は、クラフトビール業界では規模や保管設備の制約から産業廃棄物として処分されるケースが少なくありません。しかし当社では、この麦芽カスを 100%資源化 し、廃棄ゼロを達成しています。具体的には、小菅村で飼育されているヤギの飼料として無償提供するほか、動物用飼料として県外の牧場・畜産農家へも販売しています。これにより、廃棄物の削減と地域内・地域外の循環型資源活用を同時に実現しています。

さらに、ビールに使用された桃、梅、ぶどうなどの果実やハーブといった副原料についても、使用後にただ廃棄するのではなく、小菅村内の廃棄物処理施設を通じて堆肥化されます。こうして生まれた堆肥は「道の駅こすげ」で販売され、農作物の栽培に再活用されるなど、循環型の資源活用モデルが確立されています。

麦汁冷却によって発生する温水の再利用

麦汁の煮沸後には、発酵に適した温度に下げる必要があります。この冷却プロセスでは、逆に冷却装置により熱を吸収した水が温水として生成されます。当社では、この温水を無駄にせず、お湯タンクに回収して再利用しています。再利用先は主に次回の麦汁仕込みや、発酵タンクの洗浄、醸造設備の衛生管理などに活用されており、これによりボイラーの燃料使用量の抑制や水資源の有効活用が実現されています。

健康・安全に関する取り組み

責任ある飲酒への取り組み

当社では、消費者が1回あたりの純アルコール量(g)を把握しやすいよう、業界団体の自主基準策定に先駆け一部製品のラベルに純アルコール量を明示しています。また全ての缶製品ラベルには自主基準に則り「お酒」マークを表示しています。

さらに、アルコールを飲まない方にも楽しんでいただけるよう、アルコール度数0%のノンアルコールビールを開発中で、近く販売開始予定です。これらの取り組みにより、消費者が自分の飲酒量を適切に管理し、安心してビールを楽しめる文化の醸成に貢献してまいります。

安全・衛生管理の取り組み

当社では、従業員の安全と衛生を守るため、日常的な管理体制を構築しています。労働安全衛生法に基づき安全衛生推進者を選任し、労働者の危険や健康障害を防止するための措置を行なっています。

月に1回の安全会議を開催し、全従業員に向けて安全意識の向上と継続的な周知を図っています。さらに労働災害や事故を防ぐために、製造場内を定期的に巡視する安全パトロールを行なっています。ノロウイルスなどの感染症対策についても明確な対応方針を設けており、発症者が回復し医師の診断を受けるまで出勤を停止するなど、職場内での感染拡大を未然に防ぐ体制を整えています。これらの取り組みを通じて、安心・安全な職場環境の維持に努めています。

従業員の健康づくりへの取り組み

当社は全国健康保険協会の「健康事業所」に取り組む企業として、従業員の健康づくりを経営課題の一つと位置づけています。定期健診の受診徹底や職場での運動促進、食生活改善の支援、メンタルヘルス対策などを通じて、健康で活力ある職場環境づくりを進めています。社員一人ひとりが心身ともに健やかに働けることを大切にし、企業全体の生産性と持続的な成長につなげることを目指しています。

育児休暇取得率100%

当社ではライフイベントと仕事の両立を重視し、育児休暇制度を整備しています。近年、子どもが生まれた従業員は二世帯と少ないですが、取得率は100%です。事前面談で休暇計画を調整し、休業中は人事が連絡を取り、復帰後は時短勤務やリモートを組み合わせ、評価面談でキャリアへの不利益を防止します。小規模組織ならではの機動的な引き継ぎ体制が取得を後押しし、安心して子育てに専念できる環境を実現しています。

社会課題解決への取り組みは2025年4月時点での取り組みと見込みであり、今後も見直しとアップデートを進めていきます。